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セキュリティにも「避難訓練」が必要です!中小企業のためのランサムウェア机上演習

  • 2 分前
  • 読了時間: 10分


  • 社内のパソコンに突然、身代金を要求する画面が表示された

  • 共有フォルダが開けず、複数の社員が仕事を続けられない

  • 取引先から「御社から不審なメールが届いた」と連絡が入った

  • システム会社へ電話したが、担当者につながらない


このような事態が起きたとき、あなたの会社では誰が何を判断するでしょうか。


「感染したパソコンをネットワークから切り離す」

「保守会社へ連絡する」


といった対処を知っていても、実際の事故では技術的な対応だけでなく、さまざまな判断が必要になります。


  • 業務をどこまで止めるのか

  • 社員には何を伝えるのか

  • 顧客や取引先へ連絡するのか

  • 誰が対応方針を決めるのか

  • 復旧まで仕事をどう続けるのか


こうした判断を、事故が起きてから初めて考えるのは危険です。

そこで役立つのが、ランサムウェアの発生を想定した「机上演習」です。


セキュリティ訓練は、専門家だけのものではない


セキュリティ訓練と聞くと、次のような専門的なものを想像するかもしれません。


  • 社員へ模擬的な標的型メールを送る

  • 実際のシステムを止めて復旧させる

  • セキュリティ製品を操作する

  • 専門業者が攻撃を再現する


こうした訓練もありますが、すべての会社が最初から大がかりな訓練を行う必要はありません。


机上演習では、ランサムウェアが発生したという架空のシナリオを読み、参加者同士で対応を話し合います。基本的には、会議室やオンライン会議で実施できます。


実際のパソコンを感染させたり、社内システムを止めたりするものではありません。


IPAも、中小企業などが利用できる「セキュリティインシデント対応机上演習教材」を公開しています。教材は、過去のランサムウェア被害事例を参考にしたシナリオを使い、参加者がグループで対応方針や方法を検討する構成です。




机上演習で確認するのは「知識」より「会社としての判断」


ランサムウェア対策の知識を学ぶだけであれば、研修動画や資料でも可能です。

しかし、机上演習の目的は、参加者の知識を試すことではありません。


確認するのは、事故が起きたときに会社として判断し、動ける状態になっているかです。


例えば、感染が疑われるパソコンをネットワークから切り離す必要があることを、総務担当者が知っていたとします。

しかし、実際には次のような問題が起こる可能性があります。


  • 社員が異常を誰へ報告すればよいか分からない

  • 有線LANは抜いたが、Wi-Fiへの接続が残っている

  • サーバーも止めるべきか判断できない

  • システムを停止する権限が誰にあるか分からない

  • 保守会社の緊急連絡先が見つからない

  • 経営者が不在で、顧客への連絡を決められない


個別の対策を知っていても、役割や判断基準が決まっていなければ、会社としては動けません。

机上演習では、こうした「知識と実際の対応の間にある穴」を見つけます。


中小企業なら30~60分の簡易版から始められる


IPAが公開している教材では、インシデント対応の基礎を学ぶ座学と、グループで検討・発表する演習が組み合わされています。


一方、社内で初めて実施する場合は、内容を自社向けに絞った30~60分程度の簡易版から始める方法もあります。


これはIPA教材の標準的な所要時間を示すものではなく、ITワークラボが中小企業向けの入口として提案する簡易形式です。

参加者は、3~6人程度でも構いません。


  • 経営者または判断権限を持つ人

  • 総務・管理部門の担当者

  • ITやシステム会社との連絡担当者

  • 顧客や取引先への対応を担当する人

  • 業務部門の責任者


専任のIT担当者がいない場合でも、事故発生時に判断や連絡に関わる人が参加すれば実施できます。


簡易版の進め方


1.短いシナリオを用意する


最初から複雑なシナリオを作る必要はありません。

例えば、次のような内容です。


  1. 月曜日の午前9時、経理担当者のパソコンに身代金を要求する画面が表示されました。

  2. 担当者は共有フォルダも開けないと話しています。

  3. 別の社員からも、ファイル名が変わっているという報告がありました。


まずは、この状況で何をするかを参加者に考えてもらいます。


2.状況を少しずつ追加する


最初の対応について話し合った後、追加情報を出します。


  1. 保守会社へ電話しましたが、担当者は別の対応中で、折り返しまで1時間ほどかかるとのことです。

  2. 主要顧客から、今日中に必要なデータを送ってほしいと連絡がありました。

  3. バックアップは取得しているはずですが、最後に復元確認をした時期が分かりません。


状況を段階的に追加すると、連絡先、判断権限、バックアップ、顧客対応などの課題が見つかりやすくなります。


3.参加者で対応を話し合う


進行役は、次のような質問をします。


  • 最初に誰へ報告しますか

  • 社内で誰が対応を取りまとめますか

  • どのパソコンやシステムを止めますか

  • 誰が停止を決めますか

  • どの外部事業者へ連絡しますか

  • 顧客や取引先には、誰が何を伝えますか

  • システムが使えない間、業務をどう続けますか


回答に正解を求める必要はありません。

意見が分かれたり、誰も判断できなかったりした部分こそ、演習で見つけたい課題です。


4.決まっていないことを記録する


演習中に見つかった課題を、簡単に記録します。

例えば、次のような内容です。


  • 緊急時の連絡先が最新ではなかった

  • 経営者不在時の代理判断者が決まっていなかった

  • システムを停止する基準がなかった

  • バックアップの復元確認をしていなかった

  • 顧客への連絡文や承認手順がなかった


記録することが多すぎると、その後の改善が進みません。

初回は「影響が大きいもの」「すぐ直せるもの」を中心に、3~5項目程度へ絞ってもよいでしょう。


初回の演習で確認したい5つのポイント


1.最初の報告先


異常を発見した社員が、誰へ、どの方法で報告するのかを確認します。


社内ネットワークやメールが使えない可能性もあるため、電話やチャットなどの代替手段も必要です。


連絡先を文書にしていても、担当者が退職していたり、休日の連絡方法がなかったりする場合があります。


2.被害拡大を防ぐ初動


IPAの「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」では、ランサムウェア感染時の初動として、感染したパソコンやサーバーの利用を停止し、ネットワークから切り離すことが示されています。


一方で、状況を確認せずに電源を切ると、調査に必要な記録が失われる可能性もあります。


社員が現場で迷わないように、


「何をしてよいか」

「何を自己判断でしてはいけないか」

「誰の指示を受けるか」


を決めておく必要があります。


3.停止と復旧を決める人


被害拡大を防ぐためには、サーバーやクラウドサービス、拠点間の通信を止める判断が必要になる場合があります。

しかし、システムを止めれば業務にも影響します。


  • 誰が停止を判断するのか

  • 経営者不在時は誰が代行するのか

  • どの業務を優先して復旧するのか

  • 復旧したと判断する条件は何か


技術担当者や保守会社だけに任せず、事業への影響を踏まえて判断できる体制が必要です。


4.社外への連絡


インシデントの内容によっては、顧客、取引先、保険会社、警察、所管官庁などへの相談や報告が必要になる可能性があります。


この段階で、被害の全容が分かっているとは限りません。

不確かな情報を断定して伝えないためにも、次の点を確認します。


  • 誰が社外対応を担当するのか

  • 誰が発表内容を承認するのか

  • どの相手へ、どの順番で連絡するのか

  • 問い合わせ窓口をどこに設けるのか


連絡文を完成させておく必要はありませんが、ひな型と承認手順があれば混乱を減らせます。


5.システムが使えない間の業務


ランサムウェア対応は、データを復元すれば終わりとは限りません。

原因調査、安全確認、端末の再設定などに時間がかかる可能性があります。


  • 受注情報をどのように確認するか

  • 顧客からの問い合わせをどう受けるか

  • 納品や請求を継続できるか

  • 紙や別端末による代替手段があるか

  • 復旧まで何日耐えられるか


この確認は、セキュリティ対策だけでなく、事業継続の見直しにもつながります。



演習で「できないこと」が見つかっても失敗ではない


演習中に誰も判断できなかったり、対応手順の不備が見つかったりすると、担当者は気まずく感じるかもしれません。


しかし、机上演習は社員や担当者を評価するための試験ではありません。

事故が起きる前に問題を見つけることが目的です。


進行役は、次のようなルールを最初に共有すると進めやすくなります。


  • 個人の知識不足を責めない

  • その場で完璧な結論を出そうとしない

  • 現在のルールで対応できるかを確認する

  • 分からないことは「要確認」として記録する

  • 演習後に改善する項目を絞る


参加者が安心して「分からない」「決まっていない」と言える雰囲気が重要です。


30分と60分の進行例


30分で試す場合


  • 5分:目的とルールの説明

  • 5分:最初のシナリオを確認

  • 10分:初動対応と役割を話し合う

  • 5分:追加状況への対応を検討

  • 5分:課題を3項目に絞る


60分で実施する場合


  • 10分:目的、前提、対応の基本を確認

  • 10分:最初のシナリオを検討

  • 15分:追加状況を踏まえて対応を検討

  • 10分:顧客対応と業務継続を検討

  • 10分:不足しているルールや情報を整理

  • 5分:改善担当者と期限を決める


初回から多くの部署を集めることが難しければ、まず経営者と管理部門だけで試し、次回から対象を広げる方法もあります。


演習後は、分厚い報告書より「次に直すこと」を残す


演習を実施しても、報告書を作っただけでは対応力は変わりません。

演習後は、見つかった課題ごとに、担当者と期限を決めます。


見つかった課題

改善内容

担当

期限

保守会社の緊急連絡先が不明

契約内容と休日連絡先を確認する

総務

今月末

経営者不在時の判断者が不明

代理責任者を決めて手順書に追記する

経営者

次回会議

復元できるか確認していない

テスト用データで復元確認を行う

IT連絡担当

翌月

顧客への連絡手順がない

第一報のひな型と承認者を決める

営業責任者

今月末

一度にすべてを改善する必要はありません。

次回の演習で、前回見つかった課題が解消されているかを確認すれば、少しずつ対応力を高めていけます。


机上演習だけでランサムウェアは防げない


机上演習は、事故発生時の判断や連携を確認するものです。

演習を実施しただけで、ランサムウェアへの感染を防げるわけではありません。


  • OSやソフトウェアの更新

  • 多要素認証

  • アカウントと権限の管理

  • ウイルス対策や監視

  • バックアップ

  • バックアップからの復元確認

  • 社員への教育

  • 外部相談先の確保


こうした予防・検知・復旧の対策と組み合わせる必要があります。


特にバックアップは、取得していることだけでなく、ランサムウェアから保護され、実際に復元できることの確認が重要です。


事故が起きる前なら、落ち着いて失敗できる


セキュリティ訓練は、専門的なシステムを使う大がかりなものだけではありません。


ランサムウェアが発生したというシナリオを読み、関係者で対応を話し合う机上演習なら、専任のIT担当者がいない中小企業でも始められます。


最初に確認したいのは、次の5点です。


  1. 最初に誰へ報告するか

  2. 被害拡大を防ぐために何をするか

  3. 停止と復旧を誰が決めるか

  4. 顧客や取引先へ誰が連絡するか

  5. システムが使えない間、業務をどう続けるか


対応できないことや、決まっていないことが見つかっても問題ありません。

事故が起きていない今なら、業務や顧客へ被害を出すことなく失敗できます。


年に一度でもシナリオを変えて確認すれば、手順書を「作ったままの文書」ではなく、実際に使える仕組みへ近づけられます。


参考資料




💬 ご相談はこちら


ITワークラボでは、IT担当者がいない中小企業向けに


  • ランサムウェア発生を想定した机上演習の企画・実施

  • 自社の業務に合わせた演習シナリオの作成

  • 緊急連絡網や役割分担の整理

  • インシデント対応手順の作成・見直し

  • 演習で見つかった課題の改善支援

  • バックアップや復旧体制を含むセキュリティ対策の確認


などをサポートしています。


「訓練をしたことがない」

「誰を参加させればよいか分からない」

「手順書が実際に使えるか確認したい」


といった段階でも、お気軽にご相談ください。


現時点で対応手順や演習シナリオがなくても問題ありません。

初回相談は無料です。




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