社員の“うっかり”が一番危険──小さな行動で守るセキュリティ習慣
- ITワークラボ
- 10月24日
- 読了時間: 4分

「うっかりクリック」で止まる会社
ある日、B社(従業員20名の小さな建設業)の営業担当が、取引先を名乗るメールを開きました。「請求書データを確認してください」という件名。何の疑いもなく添付ファイルをクリックした瞬間、画面が止まり、ファイルが開けなくなりました。
実は、添付されていたのはランサムウェア感染を狙う偽装メール。その日のうちに社内サーバーのデータが暗号化され、取引先にも同様のメールが送られてしまいました。
幸い早期に気づき、大事には至りませんでしたが、復旧には3日を要しました。
社員は「自分のせいで会社が止まった」と肩を落としました。
しかし、B社の社長は叱ることなく言いました。
「誰にでも起こりうること。だから、次に備えよう」
そこから、B社の“セキュリティ文化づくり”が始まりました。
7割の攻撃は“人”から始まる
サイバー攻撃というと、専門的な技術で突破されるようなイメージがありますが、
実際には約7割が「人のミス」から始まっていると言われています。
メールの添付ファイルを不用意に開く
USBやクラウドに無断でデータを保存する
パスワードを共有・使い回す
退職者のアカウントを残したままにする
どれも「悪意があったわけではない」「忙しくて確認を忘れた」──つまり“うっかり”です。そして、この“うっかり”こそが攻撃者の最大の突破口になります。
よくある“うっかり”4選
① メールの添付ファイルをそのまま開いた
最近は、実在の企業名や担当者名を装った精巧な偽メールが増えています。
見た目では判別がつかないことも多く、油断が命取りに。
② パスワードを共有していた/付箋に書いていた
「チームで共有したほうが早い」と思っても、それは合鍵を渡しているようなもの。
外部から侵入されれば、誰がアクセスしたかも分かりません。
③ 退職者のアカウントが残っていた
「忙しくて削除を忘れていた」──その一瞬が命取りです。
悪意がなくても、放置アカウントが攻撃者の足がかりになるケースは多発しています。
④ 無断で無料アプリをインストールした
便利そうなツールの中には、情報を外部に送信する悪質なものもあります。
「仕事の効率化」のつもりが、会社のデータを流出させることも。
今日からできる“小さな行動”3つの習慣
セキュリティ対策は高額なシステムではなく、社員一人ひとりの習慣から始まります。
今日からできる3つの行動を紹介します。
① メールは“ワンクッション”置いて開く
メールを開く前に、たった3秒で確認を。
送信元のアドレスは正しいか?
件名が不自然でないか?
URLや添付ファイルに違和感はないか?
違和感を感じたら開かず、上司や担当者に相談する。
この3秒の習慣が、何百万円もの被害を防ぎます。
② 共有フォルダの“見られる範囲”を定期的に確認
GoogleドライブやOneDriveなど、クラウドの共有範囲は放置されがちです。
退職者・外部パートナー・「全員アクセス可」の設定は危険。
月に一度、フォルダのアクセス権を見直すだけでリスクは大きく下がります。
③ パスワードは“個人専用”+“二段階認証”
「同じパスワードを複数サービスで使わない」ことが大前提。
最近は無料のパスワード管理ツールも普及しています。
そして、二段階認証をオンにするだけで、外部からの侵入をほぼ防げます。
経営者ができる“文化づくり”3ステップ
社員教育は「ルール」ではなく「文化」です。
一人の油断を責めるのではなく、「報告しやすい空気」をつくることが最大の防御力になります。
① 「怪しいと思ったら相談していい」文化をつくる
「もし違っていたら恥ずかしい」という心理をなくす。
「報告してくれてありがとう」と言える会社は、被害を最小限にできます。
② 失敗を共有する
ミスを責めるのではなく、「どう防げたか」をチームで話し合う。
トラブルが“学び”に変わる瞬間です。
③ 月1回の“セキュリティ5分ミーティング”
難しい研修は不要。
月に一度、たった5分で「最近気をつけたいこと」を共有するだけで、社員の意識は確実に変わります。
“人が守る会社”は、どんなソフトより強い
B社では、事件以降「セキュリティは人で守る」を合言葉に、毎月の5分ミーティングを続けています。結果、社員同士で「これ怪しくない?」と声を掛け合う文化が生まれ、再発はゼロになりました。
セキュリティの本質は、人の意識と行動です。
誰か一人の油断が会社全体を危険にさらす一方で、一人の“気づき”が会社を救うこともある。
社員一人ひとりが守りの主役になる会社は、強い。
それが、これからの中小企業が目指すべき“安心のかたち”です。
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