top of page

退職者の人事データはいつまで保存?給与ソフト・Excel・紙の整理と削除の考え方

7 時間前
読了時間: 9分
退職者の人事書類とパソコンを確認する女性担当者。鍵付きの保存フォルダとカレンダーを添え、保存期限と情報整理を表現したイラスト。

「退職した社員の情報、消してしまって大丈夫だろうか」


そう考えて、給与ソフトの登録も、共有フォルダのExcelも、紙の書類も、そのまま残していませんか。


必要な記録を消してしまうと、税務・労務の手続や問い合わせに対応できなくなるおそれがあります。一方、役目を終えた情報を残し続けると、漏えいや誤使用の対象を増やしてしまいます。


退職者の情報は、書類やデータごとに「残す理由・期限・保存先・見られる人」を決めることが大切です。


この記事では、人事・経理・IT管理を兼務する中小企業の担当者に向けて、保存期間の基本と、会社の中に散らばった情報の整理方法を紹介します。


※ 2026年11月2日時点で確認した公的資料に基づきます。保存期間は資料の種類や個別事情によって異なります。


退職者の情報に、共通の「保存年数」はない


退職者の情報といっても、労働者名簿、賃金台帳、扶養控除等申告書、緊急連絡先など、内容はさまざまです。


個人情報保護法には、個人情報すべてに共通する保存期間はありません。

個人情報保護委員会は、利用する必要がなくなった個人データについて、遅滞なく消去するよう努めなければならないと説明しています。[1]


一方、労務や税務の法令で保存が必要な資料もあります。

そのため、退職したという理由だけで、まとめて削除するのは適切ではありません。


まずは、代表的な資料を分けて考えましょう。


書類・情報の例

保存期間の基本

確認したいこと

労働者名簿

労働基準法上は5年。経過措置で当分の間は3年

起算日は死亡・退職・解雇の日

賃金台帳

同上

原則は最後に記入した日。対象の賃金の支払期日がそれより遅い場合は、その支払期日が起算日

出勤簿・タイムカードなど労働関係の重要書類

同上

原則は書類の完結の日。賃金関係では支払期日との関係も確認

扶養控除等申告書など

原則7年

提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から数える

緊急連絡先や作業用の名簿など

すべてに共通する法定年数はない

退職後も必要な目的があるか、ほかの保存義務に関係しないかを確認


労働関係書類の期間・起算日は厚生労働省の案内と労働基準法施行規則、税務書類は国税庁の案内に基づきます。上の表は代表例であり、人事書類のすべてを網羅したものではありません。[2][3][4]


なお、国税庁は、2026年1月1日以後に支払を受けるべき一定の老齢一時金に係る退職所得の受給に関する申告書について、10年間の保存が必要としています。

「退職関係の申告書は全部7年」と覚えないようにしましょう。[4]


「退職日から3年」「全部7年」と一律に決めず、資料の種類と、いつから数えるかをセットで確認するのがポイントです。


保存期間を過ぎても、残す必要がある場合はある


法定保存期間は、保存が義務付けられる期間です。その期間が終わったことだけを理由に、どんな事情でも直ちに削除しなければならないわけではありません。


例えば、労務上の紛争が続いている場合などは、記録を引き続き保管する必要があり得ます。厚生労働省も、時効の更新などにより、3年を経過しても労働関係書類が必要になる場合があると説明しています。[2]


延長して保存する場合は、「念のため」で止めず、次のように理由と見直し時期を記録する方法がおすすめです。


対象:〇〇さんの勤怠記録 保存理由:継続中の労務相談への対応 管理担当:総務責任者 次回確認:相談の終結時、および半年後

保存する必要がある範囲を、社会保険労務士や弁護士などと確認します。

税務書類の判断は税理士へ相談しましょう。


「念のため全部残す」ことで増える4つのリスク


残す必要がある記録を守ることと、使わない情報を持ち続けることは分けて考えましょう。以下は、会社の運用上想定されるリスクです。


1.漏えいしたときの影響が広がる


人事データには、住所、給与、口座、扶養家族などの情報が含まれます。

不要になった退職者情報まで同じ保存先に残していると、不正アクセスや誤送信の際に、過去の従業員と家族にまで影響が及ぶ可能性があります。

情報を整理することは、万が一の被害対象を減らす取り組みにもなります。


2.必要のない人まで見られる状態になりやすい


「人事システムの権限は設定している」という会社でも、そこから出力したExcelが、全社員の開ける共有フォルダに残っていることがあります。

担当者の異動後もアクセス権が変わらず、退職者の情報を見られる状態が続くことも考えられます。

保存する資料は、保管期間中に誰が見る必要があるかも決めましょう。


3.古い情報を誤って使う


過去の住所への書類発送や、退職者を含む連絡先一覧への一斉送信など、古い情報の使い回しは誤送付・誤送信につながります。

退職者分を通常の業務用一覧から分け、履歴として保管する場合も、現役社員の情報と取り違えにくい表示にしておきます。


4.管理や事故対応の負担が増える


同じ情報が人事システム、共有フォルダ、担当者のPC、紙のファイルに残ると、どれを管理対象にすべきか分かりにくくなります。

削除の依頼を受けたときや、事故が起きたときにも、所在の確認に時間がかかります。

使わないコピーを減らすことは、日頃の管理負担を減らすことにもつながります。


マイナンバーは「ほかの人事情報と同じ」で扱わない


マイナンバーは、保管や廃棄に関する制限を別に確認する必要があります。


必要な事務がなくなり、所管法令で定められた保存期間も経過した場合には、できるだけ速やかに廃棄・削除しなければなりません。[5]


ただし、退職後も法定保存が必要な申告書等に記載されている場合、その期間は保存します。「退職したら即削除」「何かに使うかもしれないから無期限保存」のどちらでもありません。


申告書、番号管理用のデータ、作業用コピーなどを区別し、それぞれの保管の必要性を確認しましょう。


給与ソフト・Excel・紙を、どこから整理する?


最初からすべてを片付けようとせず、退職者1人分を選び、情報がどこに残っているか確認するところから始めます。


手順1:保存先を洗い出す


給与・人事システム、共有フォルダ、担当者のPC、メール添付、紙のファイルなどを確認します。社労士・税理士などの委託先へ渡した情報も、確認先として整理しておくとよいでしょう。


給与ソフトから出力したExcelと、正式に保存する帳票が同じものとは限りません。

どれを保存記録とするか確認してから、不要な作業用コピーを整理します。


手順2:期限と管理担当者を決める


次のような一覧を作ると、担当者が変わっても判断を引き継げます。


管理対象

残す理由・根拠

起算日・保存期限

保存先・閲覧できる人

管理担当・次回確認日

労働者名簿

法令上の保存

退職日と適用する期間を確認

人事用フォルダ/総務担当

総務責任者/年度末

年末調整の申告データ

税務上の保存

申告書の種類・年分から確認

対応システム/給与担当

経理責任者/年度末

作業用の連絡先Excel

用途終了の有無を確認

不要と判断したら削除対象へ

担当者PCなど所在を確認

作成担当/今回点検時


これは管理方法の例です。

実際の期限は、自社の資料と事情に合わせて記入してください。


手順3:閲覧者を絞り、不要なコピーを整理する


正式に保存する情報は、会社が管理できる場所に保管し、担当者の個人PCだけに置く運用を避けます。


紙なら施錠できる保管場所、電子データなら必要な担当者だけが開ける保存先を選びます。

管理担当者が異動・退職したときの引き継ぎも決めておきましょう。


手順4:削除方法と結果を確認する


システムの「非表示」「退職者に変更」「削除」が、それぞれ何を意味するかは製品によって異なります。操作前に、必要な帳票や履歴まで消えないかを確認してください。


また、システム内の情報を削除しても、出力済みExcelやメール添付が自動的に消えるとは限りません。


バックアップについても、保管期間、閲覧・復元できる人、期限到来後の消去方法を確認します。復元したときに削除済みの情報が再び通常業務へ戻らないよう、対応手順を決めておくことが大切です。バックアップにあるという理由で、無期限に残す運用にはしないようにしましょう。


削除・廃棄した際は、対象、実施日、方法、実施者を記録する運用がおすすめです。

記録の中に不要な個人情報を再び書き写す必要はありません。


アカウントの停止と、記録の保存は分けて考える


「給与明細の記録を残す必要があるから、本人のアカウントも残している」という場合は、システムの仕様を確認しましょう。


会社が記録を保存することと、退職者がログインできることは別の管理事項です。


退職後の明細交付などで本人の閲覧を認める場合も、閲覧できる情報、利用できる期間、終了時の対応を決めます。保存のために、業務システムへのアクセスまで継続させる必要があるかは、切り分けて確認してください。


まずは、退職者1人分の保存先を確認しましょう


今日の作業は、退職者1人分について、次の4点を整理するだけでも十分です。


  • 何のために残しているか

  • いつまで残すか、いつ見直すか

  • どこに保管しているか

  • 誰が見られるか


保存義務のある記録を守り、役目を終えた情報を整理する。

この両方を進めることで、情報漏えいのリスクと日々の管理負担を減らせます。



ITワークラボでは、中小企業の共有フォルダやクラウドの整理、閲覧権限の見直し、担当者が続けられる運用づくりをご支援しています。


「給与ソフトの外にも情報が散らばっている」

「どの担当者に何を確認すればよいか分からない」


という場合は、お気軽にご相談ください。

保存期間の法的・税務上の判断は社労士・税理士等に確認しながら、ITの管理方法を一緒に整えていきます。




参考資料

  1. 個人情報保護委員会「取得した個人情報は、いつ廃棄しなければなりませんか。」

    https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q5-2/

  2. 厚生労働省「賃金台帳等の労働契約関係の書類の保存期間は何年ですか?」

    https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/syuugyoukisoku/q6.html

  3. 厚生労働省「労働基準法施行規則」第56条

    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73023000&dataType=0

  4. 国税庁「No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2503.htm

  5. 個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」

    https://www.ppc.go.jp/legal/policy/my_number_guideline_jigyosha/


📖 あわせて読みたい


情報漏えいのニュースが気になったら|中小企業が保守会社に確認したい7項目|ITワークラボ
www.it-worklab.com
情報漏えいのニュースが気になったら|中小企業が保守会社に確認したい7項目|ITワークラボ
「また情報漏えいのニュース。うちの会社は大丈夫だろうか」そう思っても、ホームページやシステムを外部に任せていると、自社で何を確認すればよいのか迷うかもしれません。「いつもお願いしている会社が対応してくれているはず」「専門的なことを聞かれても、自分には分からない」そんなときは、まず任せている範囲と、今回確認してもらいたいことを整理するところから始めましょう。自分で難しい調査をする必要はありません。この記事では、IT担当者がいない中小企業の経営者や、総務などと兼務でITを管理する方に向けて、保守会社への確認事項と、そのまま使える問い合わせ文を紹介します。※ 2026年10月13日時点の公開情報に基づいています。以下の7項目は、関係機関の注意喚起を参考に、ITワークラボが問い合わせ用に整理したものです。公式のチェックリストそのものではありません。政府・関係機関も注意喚起。まずは自社との接点を確認相次ぐ不正アクセスによる情報漏えいを受け、経済産業省は2026年10月9日付で「不正アクセスによる情報漏えい等の事案を踏まえた注意喚起及び情報提供に係る協力依頼」を掲載しています。[1]また、情報セキ
カスハラ対策は2026年10月から義務化|相談・記録・連絡をITで支える8つの仕組み|ITワークラボ
www.it-worklab.com
カスハラ対策は2026年10月から義務化|相談・記録・連絡をITで支える8つの仕組み|ITワークラボ
「カスタマーハラスメント対策が義務化されると聞いたものの、何から始めればよいか分からない」 「相談窓口は作ったが、現場から本当に連絡が来るのだろうか」 「電話を録音すれば十分なのか、そのデータを誰が管理するのか決まっていない」 このような状態の会社、多いのではないでしょうか。 2026年10月1日から、すべての事業主にカスタマーハラスメント対策が義務付けられます。 会社には、方針の明確化や相談体制の整備だけでなく、事実関係の確認、被害を受けた従業員への配慮、再発防止、相談者のプライバシー保護などが求められます。 ただし、規程や窓口を用意しただけでは、現場で迷わず動ける仕組みにはなりません。 相談先が分からない、記録方法が人によって違う、証拠が個人のスマートフォンやパソコンに残る、といった状態では、必要な情報を責任者へ速やかにつなげることが難しくなります。 そこで役立つのがITです。 この記事では、カスハラかどうかを機械に判定させるのではなく、従業員を一人で抱え込ませず、事実を残し、責任者へ早くつなぐためにITをどう使うかを、中小企業向けに整理します。...


関連ページ


コメント


bottom of page