top of page

「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版をやさしく解説|まず見直したい3つのポイント

  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

IPAから、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」が公開されました。


今回の改訂は、単なる更新ではありません。ランサムウェア被害の深刻化、サプライチェーン全体での対策の必要性、人材不足といった現実を踏まえて、中小企業が取り組みやすい形へ見直されています。改訂版では、情報セキュリティ6か条、自社診断、SCS評価制度を踏まえた整理、人材確保・育成に関する付録などが盛り込まれています。  


つまり今回の第4.0版は、難しい仕組みを増やしたというより、今の中小企業に必要な対策を、より実務に近い形で整理したものと考えると分かりやすいです。


この記事では、ガイドライン全体を細かく追うのではなく、中小企業がまず見直したい3つのポイントに絞って整理します。


1. まず見直したいのは「バックアップ」


“取っている”ではなく、“戻せる”まで確認する


第4.0版で特に目立つ変化のひとつが、従来の「5か条」が「6か条」になったことです。

追加されたのは、「バックアップを取ろう!」 です。本文でも、情報セキュリティ6か条の中にバックアップが明記され、自社診断25項目にも「重要情報の消失に備えて定期的にバックアップを取得しているか」が入っています。  


ここで大切なのは、バックアップを「やっているつもり」で終わらせないことです。


たとえば、次のような状態だと、いざというときに困ります。


  • バックアップ対象が決まっていない

  • パソコンだけで、共有フォルダやクラウド上の重要データは対象外

  • 外付けディスクを常時つないだままにしている

  • 復元確認をしたことがない


ガイドラインでは、適切なバックアップ運用として、対象選定、取得方法や間隔の検討、保管場所や世代管理、そして正しく復旧できることの確認まで示されています。迅速にデータを復旧して業務継続できなければ、組織の信頼や事業継続にも大きな影響が出るとされています。


さらに、付録の規程サンプルには、バックアップだけでなくリストア手順も含まれており、復元後の整合性確認、訓練の実施、手順書の見直しまで整理されています。  


情報セキュリティというと「漏えいを防ぐこと」に目が向きがちですが、実務では「止まらないこと」も同じくらい重要です。だからこそ、今必要なのは、「バックアップがあります」ではなく「戻せます」と言える状態です。


2. 次にやるべきは「自社診断」


“うちは大丈夫”ではなく、弱点を見える化する


第4.0版では、基本的な対策の次の段階として、「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」 を使って現状を把握する流れが明確に示されています。リスク分析の参考箇所でも、情報セキュリティ6か条や自社診断を参照して対策を進めるベースラインアプローチが紹介されています。  


自社診断では、たとえば次のような項目を確認します。


  • OSやソフトウェアを常に最新の状態にしているか

  • ウイルス対策ソフトを導入しているか

  • 長く複雑なパスワードを設定しているか

  • データの共有設定を必要な人に限定しているか

  • 重要情報のバックアップを定期的に取得しているか

  • 新たな脅威や攻撃手口を社内共有する仕組みがあるか  


ここで重要なのは、全部を一気に完璧にしようとしないことです。


中小企業では、専任の担当者がいないことも珍しくありません。

だからこそ、まずは診断を使って、今どこが弱いのかを把握し、優先順位をつけることが大切です。


たとえば、次のような問いにすぐ答えられるでしょうか。


  • 更新が止まっている機器はないか

  • 退職者や不要アカウントが残っていないか

  • 重要データの保管場所を把握しているか

  • 事故時の連絡先や判断者が決まっているか

  • 社内で守るべき最低限のルールが整理されているか


こうしたことは、普段は後回しになりがちです。

しかし、事故が起きたときに困るのは、たいていこの「何となく曖昧な部分」です。


第4.0版は、この曖昧さを減らすための出発点として、自社診断をかなり使いやすく位置づけています。


3. これからは「対策している」だけでなく「説明できる」が大事


基本方針、社内ルール、委託先管理まで整理する


今回の改訂では、SCS評価制度を踏まえた考え方も意識されており、付録の規程サンプルには、SCS評価制度の要求事項との対応表も用意されています。組織的対策、技術的対策、委託管理、情報資産管理など、どのような項目をルール化すべきかが見える形になっています。  


つまり、これからは「何となく対策しています」では弱いということです。


必要になるのは、たとえば次のような状態です。


  • 情報セキュリティ基本方針がある

  • 誰が責任者で、誰が対応するのか決まっている

  • ルールが文書として整理されている

  • 委託先やクラウド利用時の確認ポイントがある

  • 事故時の対応や事業継続の考え方が決まっている


ガイドライン本編には、基本方針の記載項目例として、管理体制の整備、法令・ガイドライン等の順守、セキュリティ対策の実施、継続的改善 などが示されています。


また、付録5の規程サンプルでは、情報セキュリティのための組織、情報資産・IT資産の管理、委託管理、インシデント対応、事業継続管理、バックアップ、リストア手順 まで含めた構成が用意されています。  


特に、外部サービスや委託先を使う会社ほど、この「説明できる状態」は重要です。

委託先管理や取引先のセキュリティ対策状況の確認に関する項目も整理されているので、今後の取引先対応を見据えても、早めに整えておく価値があります。


人が足りない会社ほど、“完璧”より“回る形”を作る


第4.0版では、人材確保・育成に関する付録も追加されました。

そこでは、基本方針の作成、実施状況の把握、対策の決定と周知などを進めるうえで、IPAコンテンツの活用、資格取得、コミュニティ参加などを通じて段階的に人材を育てる考え方が示されています。


また、事例では、外部サービスの活用、公的機関からの情報収集、資格取得支援、社内体制やインシデント対応手順の整備など、人が足りない中でも現実的に進める方法 が紹介されています。  


中小企業では、最初から専任担当者を置けないことも多いはずです。

だからこそ大事なのは、完璧な体制をいきなり作ることではなく、


  • 見る人を決める

  • 相談先を決める

  • 現状を把握する

  • 優先順位を決める

  • 少しずつルールにする


この流れを回し始めることです。


セキュリティ対策は、立派な資料を作ることが目的ではありません。現場で続けられること が大事です。


まとめ


第4.0版は、“止まらない会社”を作るためのガイド


IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、情報漏えい対策だけでなく、事業を止めないための備え まで含めて、中小企業が実務で使いやすい形に整理された内容になっています。  


特に、今回の改訂をきっかけに見直したいのは次の3つです。


  • バックアップを「戻せる」状態にする

  • 自社診断で弱点を見える化する

  • 基本方針や社内ルールを整え、「説明できる状態」を作る


すべてを一気に整えるのは難しくても、最初の一歩は踏み出せます。

後回しになりやすいテーマだからこそ、この第4.0版をきっかけに、自社の状態を一度見直してみるのがおすすめです。


より実務寄りに、

「中小企業は結局何から始めればよいのか」

「どこまでやればよいのか」

を整理したnoteも公開しました。


兼務担当者でも進めやすい形でまとめています。

興味のある方はこちらもご覧ください。



「うちの会社は何から見直せばいいのか分からない」という場合は、まず現状整理から始めるのがおすすめです。ITワークラボでは、中小企業向けにIT・セキュリティの現状整理や優先順位づけのご相談を承っています。

初回相談は無料です。まずはお気軽にご相談ください。




コメント


bottom of page